ダイアモンド博士の”ヒトの秘密” 第6回 不思議いっぱい人の寿命

ダイアモンド博士の”ヒトの秘密”

ダイアモンド博士の”ヒトの秘密 その他の回

『第三のチンパンジー』の著者  ジャレド・ダイアモンド博士(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)が 進化の謎を紐解きながら人間の本質を探ります。

2018年2月9日に放送の『ダイアモンド博士の”ヒトの秘密”』第6回は「不思議いっぱい人の寿命」です。

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寿命はどのように決まるのか

進化生物学では、生物の寿命は体の修復にどれだけエネルギーを費やすように進化してきたか、で決まると考えています。

ヒトの体は、骨を折ると治療してもらう必要はありますけど自力で治りますし、日焼けした時に皮がむけて体が自動的に皮膚を修復します。
私たちの腸の内壁は3日ごとに剥がれ落ちて新しい細胞が作られていますし、赤血球は4ヶ月で交換され常に新しい赤血球が作られています。
しかし、トカゲが尻尾を自分で修復して再生しますが、ヒトは腕や足は再生できません。

体の修復はコストの最適化にかかっています。
修復とコストは、車の修理なら人間が自分で判断します。
体の修理は、自分で判断することはできず、進化の中で最適な形が決まります。

体の場合、コストはカロリーです。
私たちは1日およそ2000カロリーを消費します。
そのカロリーで究極的に使いたいのは子どもを作ることです。
動物は、子孫を残す仕組みが整っているからこそ地球上に存在しています。
自分の足の修復にカロリーを使うと、子供を作るのに使うカロリーが少なくなってしまいます。

うさぎなどの小動物は常に天敵に殺されるリスクがある場合、殺される前に早く子供達を作るといううさぎ達の遺伝子が残りました.
小動物は自分の体の修復よりも、子作りに多くのカロリーを配分するので短命になりました。

鳥や亀のように捕食動物の攻撃で死ぬリスクが少ない場合、子作りを急ぎません。
自分の修復にも適当にカロリーを割り当てています。

ヒトも、自分の体の修復と子作りにどの程度のカロリーを割り当てるのか、その配分によって寿命が決まると博士は考えています。

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ヒトの女性は閉経してしまうのか

ヒトの女性が、中年期に生理が止まり妊娠しなくなることを閉経といいますが、なぜヒトの女性は閉経してしまうのでしょうか?

哺乳動物は、通常子供を作る能力が少しずつ衰えます。
子供を産まなくなっても生き続けるヒトは、動物の中でも珍しい存在です。

なぜ女性は閉経をむかえるのでしょうか?
子どもが独り立ちするには二十年かかります。
もし55歳で出産したら、独立する時に女性は75歳です。
今では75歳まで生きるのは普通ですけど、昔は55歳まで生きるのがやっとで、それから子供を育てるのは難しいです。

出産は今でも母体にとって大きな負担ですし、昔はさらに危険だったはずです。
出産の際に多くの女性が命を落としました。
そして高齢になるほど出産は危険です。
それまでに産んだ子供がいると、お母さんはとても大切な存在です。
高齢で新しい赤ん坊を産むより、これまでに産んだ子どもの面倒をきちんと見た方がいいとなったのです。

人は女性が子供を産まなくなっても生き続けるように進化しました.
長生きするようになったことは、人類の発展にどのように影響したのでしょうか?
伝統社会でおばあさんは、とても大切な存在です。
赤ん坊の面倒を見るお母さんに代わって、おばあさんは食料を調達したり、安定感・豊かさを子供達へ提供しました。

ヒトの秘密

45歳を過ぎて出産するのは、危険な賭けだと進化の道筋で退けられました。
ヒトは、自分の体を守り長生きして子や孫のを面倒を見るように進化しました。
年をとればとるほどありがたい存在になり、お年寄りは家族や社会に多くの 英知をもたらしました。
このことがチンパンジーなどの動物よりも、ヒトが大きく発展するよひとつの要因になったと博士は考えているのです。

宿命としての”老いと死”

私たちは体のパーツがほぼ同時に劣化するように進化してきています。
もしホルモンだけが問題ならば、進化の過程で修復してきたはずですし、そうすればヒトはもっと長生きになっていたはずです。
老いると目が悪くなり、耳が聞こえなくなり、嗅覚が劣化し、とて体の各パーツが同時に衰えるように進化してきました。
年を取るということは、修復が行われないということなのです。

生物は、自らの修復を終えて死を迎えても次の世代が続きます.
その中で人は女性が長生きして次の命と知識を受け継ぐ道を進みました。
私たちは死を恐れるのではなく、進化によって磨かれた生と死の仕組みを受け入れることが大切なのです。

まとめ

進化生物学では、何をどのぐらい修復するか定まったと考えているのですね。
そして、その結果が私たちヒトの寿命ということ.

私が老眼になったのも、ヒトという動物として目をもう修復しなくてもよさそう、とみなしているんですね。
死というと怖く感じるのですが、修復しないよと体が教えてくれているのなら、そういう時期になったのだな、と少しずつ受け入れていくということ。
これから受け入れなくてはいけないことが、どんどん増えていくことでしょう。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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