ダイアモンド博士の”ヒトの秘密” 第8回 ”進化”から見た文明格差

ダイアモンド博士の”ヒトの秘密”
ダイアモンド博士の”ヒトの秘密 その他の回

『第三のチンパンジー』の著者  ジャレド・ダイアモンド博士(カリフォルニア大学ロサンゼルス校教授)が 進化の謎を紐解きながら人間の本質を探ります。

2018年2月23日に放送の『ダイアモンド博士の”ヒトの秘密”』第8回は「”進化”から見た文明格差」です。

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農業の始まり

ヒトはアフリカで500万年前にチンパンジーから枝分かれしました。
他の地域にヒトが姿を現すのは 300万年から200万年になってからです。
アフリカは、ヒトの進化で圧倒的に先頭を走っていました。
しかし、アフリカがなぜ貧しい大陸となってしまったのでしょうか。

この格差を生んだ原因のひとつは、農業の始まりの不均衡にあると言えます。
農業は人口を増加させヒトに力を授けました。
しかし農業にすぐに移行できる地域は限られていました。
実際に野生の植物や動物の品種改良できるものはごく一部。
改良して栽培できる植物と家畜化できる動物がいたエリアは世界中でわずか10箇所。
アメリカ合衆国東部,、メキシコ、アンデス・アマゾン地方、西アフリカ、サヘル地域、エチオピア、中近東(肥沃な三日月地帯)、中国、ニューギニア高地で、農業はそれぞれ個別に始まりました。

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農業発展の地域格差

農業がそれらの地域だけで始まったわけは、品種改良して栽培できる植物や家畜にできる動物がたまたまその地域に生息していたからです。
5大哺乳動物と言われる牛・馬・ヤギ・羊・豚と、ユーラシア大陸にはトナカイ・ロバ・パラリアラクダ・アジアらくだ・水牛ガ・ウル・バンテン、アメリカ大陸ではラマがいました。

動物を家畜化するためには、野生動物を飼い慣らしながら人の役に立つ動物に改良する必要があります。
数千年の年月をかけて家畜化に成功したのはこの14種類の動物です。
家畜の食糧を調達しやすく、成長が早く、温和な性格でリーダーに従う習性がある動物が家畜に向いています。
4000種の哺乳動物の中で家畜化できたのが14種しかいないのはこういうわけです。

肥沃な三日月地帯とは農耕が最初に始まったアジア西部の地域です。
肥沃な三日月地帯は、実は大して肥沃ではありません。
乾燥地帯ですそれなのにこの地域で一万2000年前から農業が最初に始まったのは、家畜化したい動物が存在していたからです。

ジャレド・ダイアモンド

次に植物です。
野生の植物も、そのことほとんどが品種改良を行って栽培することができませんでした。
食用にできるのはほんの一部の野生の植物だけ、種の大きな穀類だけでした。
肥沃な三日月地帯の小麦は、現在私たちが口にしているものとほぼ同じものです。
1万5000年前の狩猟採集民もすでにそれを食べていて、栽培するのにそんなに手間はかかりませんでした。

農業が農業が始まった後、東西の方向に広がりました。
緯度が同じで日照時間がほぼ同じ似たような気候で同じような病気があったので、様々なノウハウが伝わりやすかったのです。
肥沃な三日月地帯から中国といった東と西の交流は、とても急速に進展しました。

南北方向に伝わるのはとても難しく、南に行くと気候が変わって熱帯になり、その先はまた寒くなります。
病気や季節、文化が大きく違うので時間がかかるのです。
すアフリカが今貧困にあえいでいる一つの要因も、この大陸が南北方向に長いからだと考えられます。

ヨーロッパによる”世界征服”の謎

第三のチンパンジー

初期の農業には二つの利点がありました。
一つは馬に関するものです。
スペイン人がアメリカ大陸に攻めんだとき、インカ帝国の軍隊は8万の兵がいました。
これに対しスペイン兵は169人だったのですが、61頭の馬がいました。
かつての戦いでは馬は立派な兵器でした。
当時アメリカ大には馬がいませんでしたので、スペイン人が制服した大きな要因のひとつとなりました。

もう一つの優位性は、やや逆説的なものです。
家畜は私たちにミルクや肉を提供してくれますが、病気もヒトに移しました。
牛の病気牛疫がヒトにうつって麻疹になりました。
それを乗り切ったヨーロッパ人には抗体が残りました。

その後彼らはアメリカ大陸に麻疹と天然痘の菌を持ち込んでしまいまい、アメリカ先住民はこれらの病気に全く無防備だったので、ヨーロッパによるアメリカ大陸征服を可能としたのです。
農業に付随した派生的な要素が歴史を大きく変えたといえます。

まとめ

現在、食物や家畜などは、当たり前に昔からあるものだと思っていました。
しかし、たくさんの植物や動物の中から、品種改良がしやすく、育てやすいものが選らばれて農業が始まったのですね。

緯度が同じだと似たような気候なので、様々なノウハウが伝わりやすく、逆に南北方向に伝わるのはとても難しいのだと知りました。
確かに東西は昔から行き来がよくありますよね。
緯度が同じというのは気候の共通点があるのだと、これもまた言われてみればその通りで、一つ一つ見ていけばヒトが考えていたこと、行動していることが理解できますね。

ヒトの行動は、農業という点から見ても面白いものですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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